タレントの藤田ニコルさんが自身の前歯をセラミック矯正にて綺麗にしたことについて、SNS上では歯科医師によって賛否両論あるようです。
そもそもセラミック矯正とはどのような治療でしょうか?
普通の矯正治療とは何が違うのでしょうか?
セラミック矯正という言葉の解釈は歯科医師によっても微妙に違うので、ここでは私個人の考えを述べます。
多くの歯科医師が想像しているセラミック矯正とは、歯ならびが乱れている方に対して行う処置を指します。
通常はワイヤーやマウスピースといった矯正装置を用いて歯を正常な位置に動かしていくわけですが、それらをせずに今ある歯を大きく削り(場合によっては神経を抜くことも)、形態を変更したセラミックを無理やりねじ込むことであたかも歯ならびが改善したようにみせる、言わば「力技の治療」といった印象でしょうか。
デメリットとして健康な歯を大量に削る、本来の歯の向きと違う歯が入るため力学的に不利、歯の長さが左右で不揃いになりやすいといった点があげられます。
こういった生体の本来のあるべき姿を無視して、無理やり治療する方法は私も同様に反対の立場であります。
しかしセラミック矯正といってもその程度には色々とあります。
歯の位置が悪くなく、たまたま少しズレていただけというような条件の良い方に行う治療はそれほど有害なものではないと私は考えています。
下の方をご覧ください。
この方は向かって左側、前から2番目の歯が捻転といって少し捻れていました。
治療後はこのようになりました。
捻転がなくなっていることにお気づきでしょうか?
行なった治療はラミネートベニアといって歯の表面だけを薄く削って、形態を整えたシェル状のセラミックを貼り付ける治療にて対応しました。(右側の前から2番目も形態改善のため同時に行なっています。)
治療に実質かかった来院回数は2回です。(ホワイトニングもしているので全体としてはもう少しかかっています。)
矯正治療でこの捻転を改善しようとすると、IPRといってその歯以外の歯も多少削ります。また捻転の改善にはやや時間がかかるので数ヶ月〜半年程度は期間を頂きたいです。
さらに改善後は後戻り防止のため、夜間にマウスピースを装着することが義務づけられます。
両者を比較すると、時間や費用対効果の面では私は前者をオススメいたします。
このように歯の位置が元々良いという条件が得られれば、セラミック矯正も悪くないと考えています。
(そもそもラミネートベニアは必要最低限の歯質削除にて審美性を向上させる治療なので、セラミック矯正のための治療法です。)
何を言いたいかというと、藤田にこるさんの術前の状態がどうだったのか私は知りませんが、頭ごなしにセラミック矯正反対!と声を大にするのは歯科医師のエゴでしかなく、条件の良い方であればそれが最良の選択肢であることもありえます。
すべては患者様に治療の利点欠点をご理解いただき、判断して頂くことなので外野がそんなにとやかくいうことでもないんじゃないかな〜、と思い今回のブログを書かせて頂きました。
結論:セラミック矯正は歯科医師にとってネガティブな言葉であるが、元々の歯の位置など条件が良い方に用いるには有益な場合も少なくない。
歯科医師
飯田 真也