ジルコニアか?e.maxか?論争に終止符を打つべく始めた連載第3回は、奥歯に用いる場合の選択基準について解説します。
前回までのブログを読まれていない方は下記も参考にしてください。
どっちがいいの?ジルコニア?e.max? ①性質編
どっちがいいの?ジルコニア?e.max? ②前歯選択編
奥歯の治療後にセラミッククラウンを用いるシチュエーションは多いです。
奥歯は前歯に比べて強度が必要とされます。
そのような奥歯にはジルコニアを用いた方が良いか?e.maxが良いか?どちらが良いのでしょう?
今回も前回同様、例を挙げて考えてみましょう。
例)あなたは奥歯のむし歯治療を受けています。
担当歯科医師との相談の上、クラウンという歯の被せ物をセラミックで製作することとなりました。セラミックにはジルコニアかe.maxかの選択をする必要がありますが、この場合どちらを選択すると良いでしょうか?
一昔前は奥歯にセラミックといえば、「メタルボンド」という名称のセラミックを用いることが主流でした。
これは金属の歯の表面にセラミックを薄くコーティングした歯です。
しかしメタルボンドはその薄いセラミック部分がよく欠けてしまい、中の金属が露出するということが頻発する材料でした。
今から10数年前、e.maxというガラスセラミック材料が登場し、こちらは奥歯にも適応することが可能となりました。
そうして徐々にメタルボンドを使用する場面が少なくなっていきました。
しかしe.maxといえど、歯ぎしりや噛む力の強い患者の場合はメタルボンド同様に割れてしまいます。
またブリッジのような欠損補綴に用いることもe.maxではできませんでした。
そのような中、さらに強度の高いセラミック材料であるジルコニアセラミックが登場したのです。
当初のジルコニアは白いとはいえ、透明感の乏しいマットな白さであったため、審美的とは言い難い製品でした。(この頃の失敗経験がある先生はいまだにジルコニアは審美性に乏しいとおっしゃります。)
しかしメーカーの開発努力もあって現在のジルコニアはより自然観のある見た目を有しており、症例にもよりますが、e.maxの仕上がりと遜色なく、なおかつ強度も高いというレベルに達しております。
そのような背景の中、現在ではおそらく大半の歯科医師は奥歯に用いるセラミックの第一選択をモノリシックジルコニア(ジルコニアの表面にポーセレンを築盛しないタイプ、強度が高く破損しづらい)としているでしょう。
やはり術者、患者ともに奥歯のような強い咬合力がかかる部位には割れにくい素材を選択したいという考え方からです。
当院でも元々クラウンが入っていたり、残存歯質がほとんどない症例、金属で補強されており変色しているような症例ではモノリシックジルコニアを選択します。
しかし硬くて割れなければそれでいいのでしょうか?
硬くて割れない中、強力な噛む力がかかり続けると次に何が起こるのでしょうか?
なんとセラミックは割れなくても、自分の歯が割れてしまいます。(抜歯になります)
したがって割れないから良いと単純にいえない部分もあります。
逆にe.maxのようなジルコニアよりも割れやすい材料を用いることで、もし割れたとしても、それは歯の破折から逃げることができる安全装置のような側面も有しているのではないでしょうか?
このあたりは患者様にご理解いただくことが大変難しい部分です。
歯科医師も自分の保身のためにどうしても割れにくい材料を勧めてしまう、という現状もあります。
当院なりの結論を申し上げますと、奥歯に用いるセラミックは、
・咬合力が平均程度の患者さまの場合はジルコニアセラミックをお勧めします。
・しかし神経を抜いた元々割れやすい歯や、強力な力がでてしまう方の場合、ジルコニアセラミックを用いたとしても必ず定期的な噛み合わせの調整や歯ぎしり防止用のマウスピースの着用をセットでお願いしています。
それではe.maxのようなガラスセラミックを奥歯に使用することはないのか?と言われるとそんなことはありません。
実は当院で最も多い奥歯のセラミックはジルコニアではなく、「LiSiを用いたセラミックオーバーレイ」です。(削除量の多いクラウンはほとんどやりません)
これこそが奥歯の寿命を最も延ばすことができ、非常に割れにくく、なおかつ審美的な結果をもたらせる一つの終着方法だと考えております。
これについては過去ブログに解説してあるのでぜひ参考になさってくださいね。
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