「セラミックは割れやすいから、できるだけ強度の高いジルコニアが良いのではないか」
そのように考える歯科医師や患者さんは少なくありません。
確かに、材料単体の曲げ強さだけを比較すれば、ジルコニアは非常に高い強度を持つ優れた材料です。一方でe.max(リチウムジシリケート)はそれより数値上は劣ります。しかし、臨床における“破折の有無”は、単純な材料強度だけで決まるものではありません。
e.maxであっても、適切な症例選択と正しい接着操作がなされていれば、臨床的に問題なく長期安定するケースは数多くあります。重要なのは「材料の強さ」よりも「接着を含めたトータルの設計」です。
特に大切なのは次のポイントです。
・適切な形成形態が確保されているか
・象牙質に対してIDS(Immediate Dentin Sealing)を適切に行っているか
・精度の高い印象(またはスキャン)が得られているか
・セット時に確実な防湿(可能であればラバーダム)が行われているか
・セラミック内面処理および歯面処理が正しく行われているか
これらの工程のどれかが不十分であれば、どれほど高強度な材料を用いても、破折や脱離のリスクは高まります。
現在、歯科界には多種多様なセメントや接着システムが存在します。それぞれに特徴があり、適応や使用手順も異なります。私自身、歯科医師向けのセミナーを年間を通して行っていますが、接着操作は想像以上に“自己流”で行われていることも少なくありません。悪意があるわけではなく、日々の臨床の忙しさの中で、基本手技が曖昧になってしまうことがあるのだと思います。
また、防湿の重要性は理解されていても、実際にラバーダムを使用しているケースはまだ十分とは言えません。接着において水分や唾液の混入は大きなリスク因子です。材料の選択以前に、環境を整えることが極めて重要です。
ジルコニアかe.maxか、という二択で考えるのではなく、「どの材料を、どのような設計と接着で使うか」が本質です。適切に設計・処理されたe.maxは、決して“割れやすい材料”ではありません。
材料の強度だけで判断するのではなく、接着を含めた総合的な診療設計を行うこと。それがセラミック治療の長期安定につながると考えています。
ジルコニアよりもe.maxの方が、症例によっては透明感や色調再現性に優れるため、より高い審美性が得られる場合があります。そのため当院では、適応を慎重に見極めたうえで、e.maxを選択する頻度が比較的高くなっています。
しかしながら、相当数の症例を行っていても、適切な設計と接着操作を徹底していれば、e.maxが破折することはほとんどありません。
このことからも分かるように、本当に重要なのは「どの材料を使うか」だけではありません。
それ以上に重要なのは、「どのような診断と設計のもと、誰がどのような手順で処置を行うか」です。
セラミック治療は、材料の進化によって支えられている一方で、接着操作や防湿、形成設計といった基本的な技術の質に大きく左右される分野でもあります。適切な形成、IDSの実践、精度の高い印象、確実な防湿環境、そして材料ごとに最適化された前処理――これらが積み重なって初めて、セラミックは本来の性能を発揮します。
したがって、セラミック治療を検討される際には、単に材料名で判断するのではなく、接着修復に精通し、これらの基本を丁寧に実践している歯科医院で治療を受けることが大切だと考えています。
材料の選択以上に、診断力と技術力が結果を左右する。
それが、日々の臨床を通じて実感していることです。
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